今話題のChatGPT。
どんなことでもAIが答えてくれるというので試しに使ってみた。
いろいろと質問してみると本当に思考しているかのようにすらすらと回答してくれて、時には一般的な人間以上に建設的な答えをくれることもある。
そこで、以前から気になっていた浦島太郎の玉手箱のことをChatGPTに尋ねてみることにした。
自分は浦島太郎が竜宮城で乙姫から玉手箱をもらい、それを開けるとおじいさんになってしまうという話がとてもSF的であり、また哲学的でもあるような感じがしていてAIがそれをどのように解釈するのか気になったからだ。

玉手箱の中にはさらに魔法の箱が入っていて、その箱を開けると人生を大きく変えるものが出てくると。煙が出てお爺さんになるという出来事も人生を大きく変えているわけだからあながち間違いとも言い切れないが、漠然としていて私の期待していたようなものとは大きく異なるなんとも物足りない回答だ。
また、私のまったく知らない浦島太郎についても話している。それによると箱の中には細い糸が入っていて引っ張って行くと海の世界にたどり着けると。つまりまた竜宮城に戻ったということだろうか。ハッピーエンドでめでたいことだがそんな浦島太郎の物語は聞いたことがない。おそらく勝手に創作した話だろう。
案外おバカなChatGPTの作る昔話がおかしくて、では存在しない昔話について尋ねてみたらどうだろうといういたずら心を含んだ興味が湧いた。
そこでまず「桃太郎」ならぬ「栗太郎」という架空の昔話について尋ねてみた。

まず始めに栗拾いをしていた少年、栗太郎が不思議な老人から預かった鞍から美しい馬が現れるそうな。現代ならサドルからバイクが出てくるといったところだろうか。人間にはなかなか思いつかない発想だ。
その馬は栗太郎を連れ空を飛ぶ。おそらく天馬だったのだろう。
そして鬼ヶ島に到着する。ここで桃太郎の要素が出てきた。栗太郎は桃太郎の派生作品なのかもしれない。
栗太郎はお供もなく鬼を打ち負かしてしまう。桃太郎をも上回る戦闘力。恐るべし栗太郎。
その後、帰って先ほどの老人に報告すると、老人は栗太郎に感謝の言葉を贈ったそうだ。命がけの死闘を演じたにも関わらず褒美などは特にない。
ChatGPTによればこの話は勇気や誠実さが重要視される、子どもたちに愛される昔話だという。何も見返りを求めずに人助けをすることの重要性を説いているということなのだろうか。たしかに昔話には人助けをした結果、褒美をもらったりする話が多いので、このような具体的な見返りのない純粋な自己犠牲の話は貴重である。
次は「鶴の恩返し」ではなく「亀の恩返し」という架空の昔話を尋ねてみた。

物語は浦島太郎と同様に亀を助けるところから始まる。ただしこちらは若者ではなく老人が海ではなく山で亀を助ける。山にいたならおそらくこれはニホンイシガメだろう。
老人は亀を背負って山を下りたそうだが、ニホンイシガメは大きくても20cm前後なので体の前で抱えた方が持ちやすそうに思えるが、とにかく背負ったらしい。
亀を池に戻すと、亀はお礼がしたいから家に招いてくれと申し出る。そして老人の家に招かれた亀は千羽鶴を折って老人にプレゼントし、池に戻る。ここでしっかりと鶴の要素を仕込んできた。お礼が千羽鶴というのもなんとも可愛らしい。
その後、老人は感謝を伝えに再び池に行くと今度は亀が老人を招待し、宝物を与えたという。
ChatGPT曰くこの話は善行が必ずしも直接的に報われるわけではないことを教えてくれるとのことだが、宝物をもらってどう見てもがっつり報われているようにしか思えない。むしろ直接的に報われていないのは先ほどの栗太郎の話の方ではないかと感じる。
まだまだちょっとおバカなChatGPTが創作した昔話。人間とは異なる突拍子もない発想の物語をさも実在するかのように語るところが、子どもが作り話を真剣に語っているみたいでついつい笑ってしまうのだが、しかし昔話の生まれる瞬間とは案外こんなものだったのかもしれない。浦島太郎の玉手箱の解釈なんかも現代人がああだこうだ考えたところで、実際は昔の人が周りの人間を楽しませるための突拍子もない発想から生まれたんじゃないだろうか。自分は今ChatGPTを通して昔話が生まれる瞬間を追体験しているのかもしれない。
それと、AIには独創性がないような話を聞くことがあるが、このように人間が思いつかないようなアイディアで物語を創作しているわけだからAIにだって独創性はあるのではないだろうか。そして現時点でもうすでにこれだけのことができるのだから、末恐ろしいと言わざるを得ない。
さらに、そのAIが創作した話をあたかも存在するように断言してしまうあたりに危うさも感じる。
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